井本直歩子(いもとなおこ)さんはアトランタオリンピックに出場した元競泳選手で、ユニセフ・ギリシャ事務所の教育専門官を務めています。
Contents
井本直歩子さんとオリンピックの水泳
井本直歩子さんは1996年のアトランタオリンピックに競泳の日本代表選手として出場し、「4×200自由形リレー」の一人としてで4位入賞を果たしました。
4人で組んだリレーで、他には三宅愛子選手、千葉すず選手、山野井絵理選手が出場しました。
1996年のアトランタオリンピックとはどんな大会だったかというと、日本のメダル獲得は、金メダルは柔道の野村忠宏さんらの3個、銀メダルは柔道の田村亮子さんらの4個、銅メダルはマラソンの有森裕子さんらの5個という成果でした。
この大会で井本さんは200m自由形等にも出場していますがこちらは予選落ちで、この大会で全般に日本の水泳ではメダルなどの目立った戦績はなかった様子です。
えっと…。何ソレ?急に仰せつかりました。。。笑 https://t.co/sq7WPJm5jC
— Naoko Imoto 井本直歩子 (@naokoimo) March 18, 2020
1976年生まれの井本さんはこの五輪の時には、20歳。(現在43歳)
当時は慶應義塾大学の学生でした。
なお、4年後の次の大会は2000年のシドニーオリンピックでした。この大会の日本代表選考が終わった時点で井本直歩子さんは現役を引退し、その後、インストラクターなどで活躍してきました。
時間は20年飛びますが、2020年東京オリンピックの開催に向けて、ギリシャ・オリンピック委員会のカプラロス会長からの日本代表として3月19日、井本直歩子さんが聖火を受け取る役割に選ばれました。
ギリシャ在住ということが理由の一つとは思われますが、森喜朗会長に代わっての重責にふさわしいだけの人物として選ばれたと言えるでしょう。式典は、無観客という中でした。
ギリシャで #東京五輪 聖火引き継ぎ式が行われ、アテネ在住の競泳オリンピアン #井本直歩子 さんへと引き継がれた。新型コロナウイルス感染拡大のため式典は大幅縮小され、無観客で行われた。#聖火 はこのあと特別輸送機に載せて運ばれ、20日午前に宮城県の航空自衛隊松島基地に到着予定。 pic.twitter.com/y6pi9F54yN
— 日刊スポーツ写真映像部 (@nikkan_photomov) March 19, 2020
流石の貫禄を感じさせられます。
井本直歩子さんの出身校
井本直歩子さんの出身校です。
出身高校:近畿大学附属高等学校
出身大学:慶應大学(総合政策学部)、サザンメジスト大学
マンチェスター大学大学院
東京都出身の井本さんが、なぜ、近畿大学附属高校なのでしょう?
まず、近畿大学附属高等学校は、東大阪市若江西新町にあって、名前の通り近畿大学の付属高校。もちろん私立で中高一貫校となります。また同校の水泳部には、オリンピック出場選手が複数いました。ただし、学校内のプールではなく近畿大学クラブセンター内のプールを利用していたとのこと。
なお、近畿大学附属高校の水泳部はイトマンスイミングスクールと強い関係がありました。出身者には、寺川綾さん(ロンドン五輪銅メダリスト)山本貴司さん、(アテネ五輪銀メダリスト)、千葉すずさん(自由形の日本記録保持者)など、じつに錚々たる水泳選手がいます。
井本さんは現役の慶応大学の学生のときにオリンピック出場・・というのは、なんとも輝かしい経歴ですが、もともと両輪を目指していたのでしょうか。
上記の疑問にある時のインタビュー答えていました。要約すると以下の項目になります。
・小学6年生の時に、50m自由形競泳で日本学童新記録をだした。
・その結果、大阪のスイミングクラブから誘われ、中学から親元を離れて寮生活。
・しかし「国際機関で働きたい」という希望があり、関西の大学でなく慶応大学の総合政策学部(SFC)に進学した。
・SFC在学中にオリンピックの代表選手に選ばれた。
なるほどですね。また、オリンピック後のことを次のように語っています。
ただ、個人種目では結果を出せず、リレー種目で4位という成績でした。
あと一歩のところでメダルはかなわず、帰国する飛行機の中で悔しさと後悔の気持ちがつのって涙が止まらなくなりました。
そのとき、近くの座席にいらっしゃった橋本聖子さん(選手/参議院議員)に気持ちを打ち明けると、「後悔があるなら(水泳を)止めてはだめよ」と諭され、帰国後、水泳を続けるための新たな道を模索し始めました。
(https://www.keio.ac.jp/ja/keio-times/features/2019/10/ より)
この卓越した行動力で、さらにアメリカに留学して国際関係論を学びながら、水泳も全米選手権などに出場していたというのですから、なんとパワフルなのでしょう。
その間に、シドニー大会日本代表選出の時期を超えて、井本さんは国際貢献・国際支援の道に本格的に踏み出すことを決めました。
このように、東京都の出身ながら、水泳を極めるために関西の近畿大学附属中学、高校と進み、しかし、もう一つの道の希望もあって慶應義塾の総合政策学部を選んだという、ユニークな経歴でした。
国連機関で仕事をするためには修士号も必須で、上記のようにマンチェスター大学大学院で修士を修めました。さらに2003年にはJICAのインターンに採用され、ガーナに派遣されました。
井本直歩子さんと「世界が尊敬する日本人100人」
上記のJICAのインターンの活動に続いて、井本直歩子さんはJPO派遣制度に合格し、2007年からはユニセフ職員として働いてきました。
派遣先は、スリランカ、ハイチ、フィリピン、マリ、そして2016年以降、ギリシャにーー。
水泳で日本トッププラスの練習を、子どもの頃から続けてきた一方で、国際機関で働きたいという永年の希望を実現させてきた、まさに逸材と言えるでしょう。
なんと井本直歩子さんはJ2009年にはニューズウィークが選ぶ「世界が尊敬する日本人100人」に選出されました。
2016年4月には井本さんがユニセフの職員として『五輪スイマーから国連職員へスポーツの力で平和を』という講演を行っています。
今さらですが、こんな講演会があるなら是非聞きたいですネ。
当時はマリにおけるユニセフの職員でした。2014年から2016年にかけて武力勢力間の紛争が続いていた当時のマリの、生々しい講演だった模様。現地で学校を再開させ、民族間の対立緩和にスポーツの促進を取り入れることを企画するなど、井本さんの務めた任務がたいへん重要、かつ信念なくしては不可能な仕事であったことが想像されます。
世界が尊敬する日本人100人、という経歴ながら、海外での活躍ということもあり、今ひとつ日本では意外と知られていなかったのかもしれません。しかし、あらためて、「世界が尊敬する日本人」という形容にふさわしい人物と言えそうです。
聖火引き継ぎ役に急きょ抜てきされた元競泳代表・井本直歩子さんに話を聞きました。https://t.co/8yJwKx34v0
— 毎日新聞 (@mainichi) March 19, 2020
ところで、「世界が尊敬する日本人100人」の2019年には、渡辺直美(お笑いタレント)や大坂なおみ(プロテニスプレーヤー)などが選ばれています。
さらに2020年の1月には、日本財団主催の「HEROs AWARD 2019」も受賞しています。
東京オリンピックは、コロナ問題を巡って2020年3月現在、なんとも難しい課題に直面しています。しかし井本さんのニュースは明るい側面を照らしてくれました。
**
以上、井本直歩子(いもとなおこ)さんは元水泳選手で、1996年のアトランタオリンピックに出場し、水泳で実績をあげてきただけでなく、国際社会で活躍するために勉学を納め、ユニセフの教育専門官としても活躍する素晴らしい人材・・という話でした。